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Google Search Console の平均掲載順位で状況判断を誤らないために。〜「平均の罠」に注意〜

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こんにちは、JADEの江越です。先日26歳になったばかりということでまだ生まれたてホヤホヤな感じですが、産声とともに世の中に発信しておきたいことがあったのでブログにします。

テーマは Google Search Console 。平均掲載順位です。「Google Search Console の順位? あー、あの小数点ついてるやつ? 順位は整数でしょ。いま目の前で検索して確認した順位とも違うし、信用ならん」などと思われている方がいらっしゃいましたら、まず以下の記事をお読みください。

blog.ja.dev

この記事ではその一歩先。「Google Search Console の平均掲載順位の変化について解釈を間違えないようにしよう」という話をします。

Google Search Console の UI で確認できる情報は限定的で、そこから見える情報だけで状況判断しようとすると、実は危うい側面があります。特に平均掲載順位だけを見て状況を解釈してしまうと、その変化がポジティブだったのかネガティブだったのかという根本の解釈から間違ってしまう恐れがあるんです。

特にまだ SEO に触れて間もない方やデータ慣れしていない方はハマりがちな罠かなと思いますので、よろしければご一読ください。

 

「順位といえば……」

順位といえば……直近では Google が検索結果スクレイピングのブロックを強化したことにより、HTTPフェッチで Google の検索順位を取得しているツールが軒並み順位が取れなくなる事象が話題でしたね。

www.sem-r.com

幸い弊社においては大きな影響はなかったため、むしろこの事象に気付くのに遅れたくらいです。ただ、以前所属していた職場で使っていたツールが使えなくなっているのかと思うと、置かれている環境によってはかなりショッキングな出来事だったのだろうなと思っています。

ここではあくまで Google Search Console の話が本題なので、Google のスクレイピングブロックの話題に関して「今回の変更を通じてGoogle 検索へのアクセスに JavaScript を有効にする必要が生じた」以上に深掘りはしません。しかしこの事象が Google Search Console で取得できるデータに影響を与えた側面もあり、その影響範囲が今回の本題「Google Search Console の平均掲載順位の解釈」にも関係する部分でもありますので、後でまた軽く触れようと思います。

(この時点で「あーこのことだな」と思われた方は、おそらく本記事の趣旨は理解できている可能性が50%以上はあると思います。気楽に読み進めてください)

 

「平均掲載順位が上がっているのに、Impression が下がっている……?」

さて本題に戻りまして。みなさんは「平均掲載順位が上がっているのに、Impression が下がっている」ないし、その逆の現象に遭遇したことがありますでしょうか?

シンプルに考えると検索順位が上がれば検索ユーザーの目に触れやすくなるので、Impression が増えそうなものですがそうはなっていない。もちろん大元の検索需要がシーズナリティなどの要因で減ったという可能性も否定できないので、Google トレンドなどを確認してみる。でも特に検索需要の減少は確認できない。こんなケースです。

こういう変化に見覚えありませんか?

 

このようなケースで目を向けるべきなのが、平均掲載順位の「平均」の特性です。平均ってそもそもなんだっけ? 平均値が動くのはどんな場合だっけ? を紐解いていくと、この謎を解くヒントが見えてきます。

 

平均の罠ってそもそもどんなのだったかね?

(平均の罠の一般論はわかっているよという方は次のセクションまで読み飛ばしてください)

まず平均掲載順位で考える前に、一般的に平均値が動くケースがどんな場合なのか考えてみたいと思います。

平均値=(母集団の合計値)/(母集団の個体数)

平均値は上記のような計算式で表せることは周知の通りかと思いますが、解釈の際に忘れられがちなのが分母の個体数のところです。データに慣れていない方だと「平均値が上がった! つまり母集団を構成する1個体あたりの数値が上がって合計値が上がったんだ!」と解釈しがちですが、「実は母集団の個体数が減った場合にも平均値は上がり得るんだよ」ということがこの計算式を冷静に眺めるとわかると思います。

 

ではこの前提をもとに平均値が上がるシナリオをいくつか考えてみましょう。

  1. 母集団の個体数が変わらず、各個体の数値が上昇
  2. 母集団に属する既存の各個体の数値は変わらないが、母集団の平均より数値の高い個体が新規で母集団に加わった
  3. 母集団に属する既存の各個体の数値は変わらないが、数値の低い個体が母集団から離脱する

 

上に挙げた3つのうち、1番目は分かりやすいパターンなので特に説明は不要でしょう。既存の母集団に属する個体の数値が上昇という一番シンプルな平均値の上昇です。

 

2番目のシナリオは状況としてはポジティブですが、元々いた個体が改善したわけではなく、既存の個体より数値が優秀な個体が入ってきた状況です。

このケースを野球に例えるなら、「元々いた選手は特別昨年と変わり映えはしなかったが、FAで加入したスーパースターの活躍によりチームが優勝した」みたいなイメージです。このケースでは特定の個体への依存度が高いことから、状況が改善したとはいえ新規個体の特性(Ex.不調や戦線離脱を起こしがちな個体)によっては必ずしも盤石な状態とはいえない可能性もあります。

 

3番目のシナリオに至っては平均が上がっていても、もはやポジティブではない可能性が高いシナリオです。もちろん数値の低い個体が母集団にとって不要な個体なので意図的に離脱させたケースであれば過度に心配する必要はないのですが、そのケースでも母集団の合計数値が下がっていることは認識すべきでしょう。

 

例えば、ライトに商品を購入していた人(=数値の低い個体)が商品を買わなくなって、全体の売り上げ(=母集団の合計値)が下がっているケース。この場合、母集団から離脱した個体より多く商品を購入していた層の購買実態が変わっていない限り、一人当たりの購入量(=平均値)が上がることになります。このケースでは合計の売り上げが下がっているわけなので、一人当たりの購入量(=平均値)だけをみて「あ、状況良くなってそう or 悪いことばかりではない」と判断するのは危険ということはお分かりいただけるかと思います。

このように一般的にも平均値の上昇が必ずしも状況の改善を意味しないということを、まずは固くご認識いただけると今後のためになるかなと。

 

平均の罠を Google Search Console の平均掲載順位に当てはめて考えてみる

では平均の罠の一般論を Google Search Console の平均掲載順位に当てはめて考えてみましょう。なお平均掲載順位は searchdata_url_impression と searchdata_site_impression、どちらをベースに計算するかでやや変わってきますが、今回は話を単純にするためにsearchdata_url_impression をベースにした平均掲載順位を計算することとします。

support.google.com

 

searchdata_url_impressionをベースにした時の平均掲載順位の計算式は以下になります。

平均掲載順位=SUM(sum_position)/SUM(impressions) + 1

この計算式を見た時の自分の気持ちとしては「おーこうすればリアルな順位状況見れるじゃん」と感動した一方で、「これ気をつけないと、解釈意外にミスりそう」と思った記憶があります。

どういうことか。先ほど一般論の方で展開した3つのシナリオに平均掲載順位の話を当てはめると以下のようになります。

  1. 母集団の個体数が変わらず、各個体の数値が上昇→元々ユーザーの検索に表出していたURL×クエリの掲載順位が上がった
  2. 母集団に属する既存の各個体の数値は変わらないが、母集団の平均より数値の高い個体が新規で母集団に加わった→「(掲載順位が上昇し)新たにユーザーの検索に表示されるようになった」 or 「元々ユーザーの検索に表示されていたもののうち検索需要が高まった」URL×クエリの掲載順位が、それ以外のURL×クエリの掲載順位よりも高かった
  3. 母集団に属する既存の各個体の数値は変わらないが、数値の低い個体が母集団から離脱する→「掲載順位が下落しユーザーの検索に表示されなくなった」 or 「元々ユーザーの検索に表示されていたもののうち検索需要がシュリンクした」URL×クエリの掲載順位が、それ以外のURL×クエリの掲載順位よりも低かった

1番目は変わらず分かりやすいというか皆さんが第一に想起されるシナリオだと思うので割愛させていただくのですが、問題は2番目と3番目のパターンです。新規個体と離脱個体の話が「検索需要」と「掲載順位の変動」という2つの話に分かれてしまっています。

ひとつ先日の検索結果スクレイピングのブロックの影響を例にとって考えてみましょう。スクレイピングがブロックされることで何が起きるか。端的にいえばスクレイピングBotによって発生していた検索(Impression)がなくなりますよね。つまり検索需要の減少によって平均掲載順位、はたまたCTRに影響が発生する可能性があるというのが結論になります(順位取得用のBotはClickはしないため相対的にCTRが上がる)。

実は最初に載せていたものはBotブロックによる影響を受けた例。Impressionが減少し、Clickはほぼ横ばい。CTRと掲載表示順位が上昇している。

 

Bot による Impression を検索と呼ぶのが適切なのかはさておき、詳細な分析をせずに「施策がうまくいって該当期間の順位や CTR が上がったんだ」といった勘違いはされないようにご注意ください。

このように Impression の発生を起点に計算されているのが Google Search Console の平均掲載順位の特徴です。要は「検索結果での表示機会を分母にしたときに、あなたのサイトは平均するとこのくらいの順位で表示されていたよ」というものを表している指標だとご理解ください。

検索表示機会に対する掲載順位という考え方自体はとても真っ当なのですが、我々が気にしがちな順位とはずれがあります。要は個別の URL ×クエリにおいて掲載順位が上がったのか下がったのかという観点ですね。Google Search Console の平均掲載順位だと、ある特定の URL ×クエリ群の順位を確認したい時に Impression によって傾斜がかけられた順位が出てきてしまうことになります。

「だからサードパーティツールを使うんだ」という方もいらっしゃると思いますが、結局サードパーティツールで観測されたものもある一点における検索順位を示したものに過ぎず、実際のユーザーへの表示された実態の合計とは乖離がある可能性があります。

よって平均掲載順位が変動したときの一番正確な確認手段は、URL ×クエリの組み合わせにおける Impression と平均掲載順位の情報をベースに吟味していくという形になります。ですが Google Search Console の UI では URL ×クエリの組み合わせで状況を確認できる数表はなく、もしやるのであればクエリ or URL で一個一個フィルタをかけることになります。変動要因に精度高く当てがついているならともかく、流石に面倒ですよね…

Google Search ConsoleのUIではクエリとページの表が分かれてしまっており、詳細な状況を確認しにくい。

 

平均掲載順位の罠から簡単に脱出できるツールがある……だと……!

ここまで読んでいただいたあなたは「Google Search Console の UI で簡単に確認できないなら、どうしたらいいんだ」という気持ちになっているかもしれません。こんな時に活躍するのが Google Search Console の Bulk Export Data、一括データエクスポートです。

support.google.com

 

一括データエクスポート機能を使えば匿名化されたクエリを含めた日次集計されたデータを文字通り全て Google BigQuery にエクスポートできます。つまり SQL さえ書ければ平均掲載順位が動いたときに、個別のドリルダウンが可能になり、先に紹介したようなシナリオのどれに当てはまるのか、検討が可能です。

しかし一括データエクスポートの存在を知ってもなお「SQL を書けるようになる」という壁が残っていますよね?もちろん SQL を書けるようになるに越したことはないですが、書けない方でも簡単に Bulk Export Data ベースのデータを確認できるようにしたツールがあります。

それが弊社の開発した Amethyst です。

amethy.st

 

Amethystならデフォルトでユニーククエリ・ユニークURL数が計算されているので、平均掲載順位が変化した時に検索結果に表示された URL ×クエリの組み合わせ数に変化が生じていないか、簡単に当たりをつけられます。またフィルタをかけることで Bulk Export Data のうち自分の見たい URL ×クエリのデータだけ抽出して、中身の変化を確認していくことも容易です。

ユニーククエリ・URL数の推移を上記のようなグラフで追える

ほか、URL×クエリ別のClick・Impression・平均掲載順位が確認できる数表もあります!

自分は知りたいことがあれば「自力でクエリ書いてデータ確認するか〜」くらいの SQL スキルはある人間なのですが、いちいちクエリ叩くのも面倒なので Amethyst でサクサクやってしまう機会がだいぶ増えました。要は SQL をかける方でも Amethyst 導入メリットがあるということです。

Amethyst は上記で紹介した一括データエクスポート機能への対応以外にも、URL のクロール・インデックス状況を簡単に確認できる機能や、GA4のデータを解釈しやすくする機能もあり、SEO に関わる方にあまねくご活用いただけるツールとして着々と進化してきているなと思います。是非前向きに導入をご検討頂けますと幸いです。

 

最後に

ここまで散々順位について語ってきたので、さも順位厨のように見えているかもしれませんが、最後に「順位ばかり見て仕事するな」というメッセージも残しておきたいなと思います。

我々が順位と呼んでいるものは、Google をはじめとする検索エンジンによる各ユーザーへのレコメンドを上から数えていったものに過ぎません。そして検索エンジンの運営元企業はユーザーが情報を探す際の手段として選んでもらえるように、日々レコメンドロジックの調整を続けておりその全てが公開されているわけもないので、ウェブマスター側で厳密な順位のコントロールなどできないはずです。

では順位がコントロールできない状況下で、ウェブマスターが SEO において本来やるべき、期待されていることは何なのか。それは自分たちでレバーを握ってコントロールできる部分、つまり「自分のサイト・サービスを検索エンジンが適切に認識できるように実装やコミュニケーションを進めること」と「ユーザーと適切な接点をもち、自分のサイト・サービスが選ばれる理由を問い改善を続けること」ではないでしょうか。

例えば自社サイト・サービスの改善のヒントを得るために上位表示サイトを参考にするといった行為。これ自体は大いにやっていただくべきかなとは思いますが、その際に「上位表示サイトとの差分を埋めたところで、それがユーザーにとって選ばれる理由になりうるのか」「そもそも上位表示サイトが本当にユーザーのニーズを100%捉え切れているのか」といった観点を忘れずに検討していただけると、SEO に関わる人間としても、検索エンジンのいちユーザーとしても、純粋に嬉しいなと思います。

お読みいただきありがとうございました! 何かの参考になっていれば幸いです!

 

 


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