こんにちは、JADEブログ編集部です。
コンサルタントの世界に限らずですが、「明日中に」「まったく新しい分野で」「資料作成を」といった急な依頼はないでしょうか。
夕方5時に「明後日まで」と言われ、実質1営業日で、整ったアウトプットを出さなければならない状況。まったく経験のない分野での提案を求められることもあるでしょう。このような状況下で、いかに質の高い提案や、資料作成を行うか。限られた時間と情報の中で、単なる思い付きではなく、根拠のあるアウトプットをするにはどうすればよいのか……?
今回は、ある日のJADE社内共有会議での、Deep Diveをベースにお届けします。
現代のビジネスパーソンが直面する課題と、その解決に向けたアプローチのひとつとして、ヤフー・データソリューション「DS.INSIGHT」の便利さについて深掘りしていきます。なお、Deep Diveを担当したのは、下の記事 で「検索ジャーニー」の重要性について書いた垣本です。
【もくじ】
期限までに何に時間を割くべきか
「今までまったく取り組んだことのないサービスを開始するので、LPやデザインなどについてご提案ください! 急ぎなので、お返事は明日中でお願いします!」
時間が限られている場合の成功のカギは、効率的な時間配分。この状況下で、最低限行うべき作業は以下の4つに集約されると垣本は言います。
- 調査して情報を集める
- 情報をもとに、ユーザー像を考える
- ユーザー像をもとに、デザインやtitle/descriptionを考える
- ドキュメントにまとめる
垣本 まず、情報がないので情報を取りにいく①。次に、ペルソナの共有があれば話が早いですが、今回それもないので、見える情報からユーザーがどういう人たちなのかを考える②。それを考えた後でようやく「デザインはこういうのがいいと思います」あるいは「title/descriptionはこれがいいと思います」という話をするための③。最後に①~③をきちんとひとつのドキュメントにまとめる④。
こういう風に分解してみたときに、とくに時間をかけるべきなのは、やはりこの考える作業の②③だと思います。情報を取ってくるのは結構ショートカットできます。ですがそれをベースに「ユーザーは誰なのか」「その人たちにはどんな表現が心に響くのか」については、どうしても頭を使わなければいけません。そしてやはり時間もかかると思います。
なので、この②と③にはなるべく時間をかけたい。できればこの①と④は工数を抑えたいなと考えました。
ドキュメントにまとめるために
あるクライアントから新商材をひとつ増やしたいと相談されました。その際のキーワードを、この原稿では「不眠症」とします。ドキュメントにまとめるために、垣本が実施したのはおおまかに以下です。
- ヤフー・データソリューション DS.INSIGHT を用いて、時系列キーワード・共起語・検索ユーザーの属性を調べる
- AI 機能を用いて、特徴的な行動・主要なかけあわせ語句などを言語化してまとめる
- Ahrefs を用いて、主要なかけあわせキーワードを調べる
- DS.INSIGHT の AI 機能で明らかにした主要なかけあわせ語句を中心に、検索ボリュームが大きいポイントを探る
- 上記2つの調査結果をもとに、ユーザー像のイメージやニーズを考える
- デザインに対する意見、title/description案を作成する
- AI を活用してドキュメントの体裁を整える
DS.INSIGHT の AI 機能
垣本 では具体的に見ていきましょう。DS.INSIGHTの機能がとても便利という話です。DS.INSIGHTはすごく良いツールで、私も大好きです。まずはデータを出してみましょう。共起キーワードに「不眠症」を入れてみます。
画像としては下のようなデータが出てきました。ちょっと複雑で見づらいですが、「不眠症」を中心に、たくさんのキーワードが放射状に広がっているのがわかります。
たとえば、「治すには」というのが一番大きな円で表示されていて、その周りに「何か」「漢方薬」「ツボ」といった治療や対策に関するワードも目立っています。
それから、「原因」という大きな円があって、そこから「更年期」「妊娠中」といったライフステージに関連するキーワードも見えます。興味深いのは「コロナ」というキーワードも見えることで、現代的な問題との関連も示唆されています。
あとは、「改善」「対策」といったワードの周りに「運動」「食事」「アロマ」などがあり、生活習慣の改善を通じた対策方法への関心も高いようです。
でも、これを見た時に「ここから何を考えたらいいんだ」とか「ここから何をどう読み取ったらいいんだ」とか、ちょっとつまずきやすいツールでもあるかなというような気がします。
そういった時に、この左上に「AIによるデータ考察」「隠れたニーズを見る」というものがあります。それぞれものすごく便利なので、ぜひ使ってほしいなというのが今日の趣旨です。
AIによる「検索意図を調べる」
垣本 はい、では「AIによる検索意図の考察」の結果を見ていきましょう。
まず、6つのカテゴリに分けられているんですけど、それぞれのカテゴリから、ユーザーのニーズや行動パターンが見えてきます。
- 治療・改善方法
- 医療・薬品関連
- 症状・原因
- 特定の状況・対象
- 医療機関・専門家
- その他
1つ目は「治療・改善方法」のカテゴリです。ここでは「治すには」「治し方」「治療」「改善」「効く」といったキーワードが出てきています。これ、何を意味してるかというと、やっぱり不眠症に悩んでいる人たちが、具体的な解決方法を求めているんですね。「どうすれば良くなるの?」という切実な思いが伝わってきます。
2つ目は「医療・薬品関連」です。「薬」「漢方薬」「市販薬」「サプリ」「ツムラ」なんていうキーワードが見られます。これ、薬による治療に関心が高いってことですよね。とくにおもしろいのは具体的な企業名が出てきてること。漢方薬のニーズが高いんだなというのがわかります。
3つ目が「症状・原因」のカテゴリ。「症状」「原因」「後遺症」「併発」「過眠症」といったキーワードが出ています。これは、ユーザーが自分の状態を理解しようとしている、あるいは不安を感じているということの表れだと思います。「私の症状って本当に不眠症なの?」「これって他の病気と関係あるの?」みたいな疑問を持っている人が多いんでしょうね。
4つ目は「特定の状況・対象」です。「高齢者」「更年期」「産後」「子供」「中学生」といったキーワードが並んでいます。これ、すごく重要な洞察だと思うんです。不眠症は、年齢やライフステージによって全然違う問題として現れるということですよね。たとえば、更年期の女性と中学生では、全然アプローチが違うはずです。
5つ目が「医療機関・専門家」のカテゴリ。「何科」「病院」「東京」「チェックテスト」といったキーワードが見られます。これは、専門家の助けを求めている人が多いことの現れです。とくに「何科」というのがおもしろいですよね。不眠症はどの診療科に行けばいいのか、意外とわからない人が多いんだなって。
最後の6つ目は「その他」のカテゴリで、「英語」「星新一」「乃木坂」「あらすじ」「違い」といった一見関係なさそうなキーワードが並んでいます。これ、一見すると「?」となるんですけど、でも実はこういうのも大事な情報なんです。たとえば「英語」だったら単純に「不眠症は英語で何というのか」という人がいるのがわかります。
こういう風に、AIがデータを整理してくれると、ユーザーの行動パターンがすごく見えやすくなるんです。たとえば、不眠症の治療サービスを企画する時に、年齢やライフステージ別のアプローチを考えたり、薬と自然療法のバランスを考えたり、あるいは「何科に行けばいいの?」という疑問に答える情報を前面に出したりできますよね。
AIによる「隠れたニーズを調べる」
垣本 もうひとつおもしろいのが「隠れたニーズを調べる」で、個人的にはとても好きです。
共起キーワードの中で「星新一」というのがさっきありました。これはそのまま作品名ですね。不眠症に悩んでいる人が検索するクエリではない可能性が比較的高いので、広告で扱う際は除外キーワードとして指定するという考えもできそうです。
あと、「中学生」とかですね。ご自身が不眠症に悩んでいて検索している方もいるんですけど、お子さんの不眠症をなんとかしてあげたい、というような親御さんもいらっしゃるというのが見えてきます。
たとえば「何歳以上であればこのオンラインカウンセリングを受けられるのか」みたいな情報を入れておいてあげると、そのお子さんの受診を考えてる方というのがクライアントさんを選んでくれる可能性が出てくるというようなことも考えられるなと思います。潜在的なニーズのところを調べてもらうと、どういうコンテンツがあると良さそうかという大きなヒントになりますので、この機能もぜひ使ってほしいなと思います。
それから、「コロナ 後遺症」という組み合わせも見逃せないです。時代ならではの悩みを反映してます。コロナ後の不眠症に特化したケアプログラムを提供するとか、そういった新しいサービスの可能性が見えてきます。
あとは眠れない時間をどうやって過ごすか……というニーズもありそうです。たとえば、占い系のニーズだったり、ちょっとした時間つぶしだったり、自分の不安や迷いに寄り添ってくれるコンテンツを探している、というようなユーザー像が見えてくるんです。
こういう風に、DS.INSIGHTの「隠れたニーズを調べる」機能を使うと、本当に思いもよらなかったようなニーズや可能性が見えてきます。
時系列で「興味・関心を分類する」
垣本 あともうひとつですね。これも私の大好きな「時系列キーワード」というDS.INSIGHTの機能です。これもやっぱり出してみた時に、ここから一体何を読み取ろうかなというのは、なかなかちょっと難しいところがあると思います。
ある程度慣れてきていれば、マイナス63日のラインに近いところでの検索ではこんなクエリがあるなとか、右側の方に行っても、まだ「睡眠薬 副作用」とか「寝れない時 寝る方法」みたいなクエリがあるなとか考えられます。ただ自分1人で考えて、何かを読み解こうとすると、結構時間かかるかなという風に思います。ここも2つ、AIのデータ考察機能があるので、使用します。
で、1つ目が「興味関心の分類を見る」というカテゴリー分けしてくれる機能があるのと、あと、時系列ならではの、「ユーザーの行動変異を調べる」という機能もありますので、これもやっぱり両方使っていただくといいんじゃないかなという風に思います。
上のこの「興味関心の分類を見る」については、先ほどの「検索意図を調べる」とかなり近いような結果にはなるんですが、プラスで違うようなものが出てきたりもします。一応出すだけ出してみて突き合わせたりするといいんじゃないかなと思います。割とこちらの方が具体的なキーワード例が出てくるような印象があります。
たとえば、「不眠症の基本情報」というカテゴリでは、「不眠症とは」「不眠症 原因」みたいなキーワードが出てきますし、「不眠症の治療法」というカテゴリでは、「不眠症 薬」「不眠症 漢方薬」みたいなキーワードが出てきます。
あとは「精神的な問題と不眠」というカテゴリで、「うつ病」「ストレス 眠れない」みたいなキーワードがあるんですね。これは、不眠症が単純な睡眠の問題だけじゃなくて、もっと深い心の問題とも関連してることを示してると思うんです。
それから、「生活習慣と不眠」というカテゴリもあって、ここには「昼夜逆転」「ショートスリーパー」みたいなキーワードが出てくる。これ、現代の生活スタイルが睡眠にどう影響してるかを考えるヒントになりますよね。
時系列で「ユーザーの行動変容を調べる」
垣本 では、「ユーザーの行動変容を見る」機能の結果を見ていきましょう。この機能のいいところは、ユーザー像をいくつかピックアップしてくれるんです。今回、AIが3つのユーザー像を出してくれました。
- ユーザー像1:40代女性
- ユーザー像2:50代女性
- ユーザー像3:10代以下の女性
まず、ユーザー像1の40代女性を見てみましょう。この方、検索期間が67日前ぐらいから現在までと、かなり長期間にわたって検索をしているんですね。
最初の頃は「燃え尽き症候群 チェック」「疲れた 休みたい」といった、仕事のストレスに関連した検索をしているんです。でも、時間が経つにつれて「鬱 薬」「自律神経 薬」みたいに、より具体的な治療法を探すようになっています。
そして直近では「寝付けない時の対処法」「夜寝れない 原因」といったキーワードが出てきて、不眠症に悩んでいる様子が見えてきますね。さらに、最後の期間では深刻なキーワードも出てきていて、かなり危機的な状況に陥っている可能性があります。
次に、ユーザー像2の50代女性を見てみると、最初から「被害妄動が激しい 特徴」「デパス 市販薬 代用」といった具体的な精神症状や薬に関する検索をしているんですね。そして、「不安症 治し方」「トラウマ 克服」といったキーワードを経て、最終的には深刻なキーワードが出てきています。
そして、ユーザー像3の10代以下の女性。この方は最初「恋愛タイプ診断」「恋愛キャラ診断」といった軽めの自己診断から始まっているんですが、途中から危険なキーワードが出てきています。そして最終的には「鬱診断テスト」「うつ病診断」といったメンタルヘルスに関する検索をしています。
こういう風に、時系列で見ていくと、ユーザーの悩みや関心がどんどん変化していく、そしてときに深刻化していく様子が分かるんです。
たとえば、40代女性の方は、仕事のストレスから始まって不眠症、そして深刻なメンタルヘルスの問題へと進展しています。50代女性は最初から具体的な精神症状に悩んでいて、徐々に深刻化しています。10代以下の女性は、恋愛や自己診断の興味から始まって、突然自傷行為などに関する検索をし、最終的にはうつ病の診断を探っています。
この情報を見ると、年齢層によって悩みの進展が違うことが分かりますね。たとえば、若い層向けには恋愛相談からメンタルヘルスケアへの橋渡しになるようなコンテンツが必要かもしれません。一方、40代、50代向けには、仕事のストレスや具体的な精神症状に対するケアが重要そうです。
また、全ての年齢層で深刻なキーワードが出てきているのが気になりますね。これは本当に深刻な問題で、早期発見・早期対応が必要だということを示しています。
このデータを活用すれば、年齢層別の対策や、悩みの進展段階に応じたケアプログラムの開発なんかができそうです。たとえば、軽度のストレス症状を感じ始めた人向けの予防プログラムとか、不眠症やうつ病の初期症状に気づいた人向けの相談窓口とか。
本当に、この「ユーザーの行動変容を見る」機能は奥が深いですね。皆さんもぜひ使ってみてください。ユーザーの悩みの変化が見えてくると、それに合わせたサービスや支援策のアイデアが湧いてきますよ。同時に、こういった深刻な問題に直面している人たちがいるということを忘れずに、責任を持ってアプローチしていく必要があります。
男女別のニーズを深堀りする
垣本 次に「ストレス解消」に関する男女別のページを作成したいとクライアントからご依頼されたとしましょう。男女を分けた時のそれぞれのtitle/description案と、あと狙うべきクエリのペアが欲しい、ということでした。
たとえば DS.INSIGHT で「ストレス」検索の時系列キーワードを男女別に分割します。この画像は、「ストレス」と検索した人が、その前後およそ1年間でどのようなキーワードで検索をしたかを時系列で表示した図です。上に行くほど男性による検索割合が高く、下に行くほど女性による検索割合が高いです。
少し細かいですが、画像から分かるのは要約すると下記のような内容です。
- 仕事関連のストレス
- 男性:「管理職 辞めたい」「長時間労働」「会社 辞めたい」など、職位や労働環境に関する具体的な検索
- 女性:「仕事 ストレス」「人間関係 ストレス」など、より一般的な仕事ストレスに関する検索
- 身体症状
- 男性:「自律神経失調症 症状 男性」など、特定の症状と性別を結びつけた検索
- 女性:「足冷」「生理不順」など、女性特有の身体症状に関する検索が多く見られる
- メンタルヘルス
- 男性:「dsm」(精神障害の診断基準)など、専門的な用語での検索
- 女性:「鬱」「不安」「眠れない」など、感情や症状を直接的に表現した検索が多い
- ストレス解消法
- 男性:「減量 方法」「プラントベース」など、具体的な行動や食事法に関する検索
- 女性:「アロマ」「ヨガ」など、リラックス法や代替療法に関する検索が多い
- 人間関係
- 男性:「結婚できない男 特徴」「人を助ける」など、社会的な関係性に関する検索
- 女性:「人間関係 疲れた」「人間関係 ストレス」など、人間関係に関する直接的な表現の検索が多い
- 自己分析
- 男性:「性格診断」「ストレスチェック 義務」など、客観的な分析や制度に関する検索
- 女性:「自分探し」「エゴグラム」など、自己理解や個性の発見に関する検索が多い
- 生活習慣
- 男性:「体脂肪計」「筋トレ」など、身体的な健康や体型に関する検索
- 女性:「昼夜逆転」「生活リズム」など、日常生活のリズムに関する検索が多い
- 感情表現
- 男性:「人生諦めた」「生きる意味」など、人生や存在意義に関する哲学的な検索
- 女性:「死にたい」「つらい」など、直接的な感情表現の検索が多い
長いので、男女別の差に注目してさらにまとめてみます。
- 男性の特徴:
- より具体的・客観的な表現を使用
- 仕事では職位や労働時間に関する悩み
- 健康面では専門用語を使用し、体型や運動に注目
- 感情表現は控えめで、哲学的な悩みとして表現
- 女性の特徴:
- より感情的・直接的な表現を使用
- 仕事では人間関係に関する悩みが多い
- 健康面では女性特有の症状や心身の不調を率直に表現
- リラックス法や自己理解に関する関心が高い
全体的に、男性は問題を客観的に捉える傾向があり、女性は感情や体調を素直に表現する傾向が見られます。
ここまでの結果をベースに、あとはドキュメントにまとめていく作業となります。
「考える」ためのAI活用
以上、DS.INSIGHTの便利な活用方法を駆け足で追ってきました。
コンサルタントとして求められることのうちのひとつに「集めた情報をもとによく考える」ということがあると垣本は言います。
垣本 たとえば Ahrefs でかけあわせクエリを機械的に取ってくるという仕事は、方法さえ知っていれば誰でもできます。
肝心なのは、その情報をもとに「ユーザーはどんな人たちか?」「特にニーズが大きいのは、どのようなトピックか?」を考えることです。
そこからさらに一歩進んで「だからこういうコンテンツが必要だ」「title/descriptionにはこのような表現を盛り込んだほうが、ユーザーの関心を引けるはず」という仮説立て・提案まで行えるようになれば最高です。
コンサルタントの皆さんは常にとても忙しいので、ぜひDS.INSIGHTの AI 機能をフル活用してください。そして短時間で高品質な提案を作成して、美味しいコーヒーを飲むリラックスタイムを確保しましょう!